こんばんは。いかがお過ごしでしょうか。
現在読んでいる本に出てきた表現をご紹介します。
errは自動詞で「誤る」という意味の単語です。
このerrを用いた表現に以下があります。
err on the side of A 「(必要以上に)Aをしすぎる」
上記の意味(「」内)はウィズダム英和辞典第2版からの引用です。
正直、よくわからないですよね?
また、今回ご紹介した表現は、err on the side of cautionという表現が定型にもなっています。
意味を見てみましょう。
to be especially careful rather than taking a risk or making a mistake
(ケンブリッジ英英辞典)
「リスクを取ったり、間違いを犯したりするよりは、用心すぎるくらいでいる」という意味のようです。
しっくりこなかったので、検索してみたところ、あるブログ記事を見つけました。
詳しい内容は、皆様もぜひご参照ください。非常に勉強になりました。
この表現が言いたいことは、「選択肢が複数あってどれもあまり良くない(=損する可能性がある)が、強いて選ぶのであればより被害が少ないであろうof以下を選択する」というニュアンスで使われる表現であることがわかりました。
つまり
「どうせ間違える(errする)なら、Aを選んで間違えようぜ!」
ということです。
どっちもどっちだけど、思い切ってAにしようぜ。こっちのほうがまだマシだろ。知らんけど。的な。
sideには「側」という意味がありますし、be on A’s sideで「Aの味方」という意味もありますので、筋は悪くないかと思います。
さて、先ほどのerr on the side of cautionは、A(リスク・間違い)とB(用心)を天秤にかけ、まだマシなB(用心=caution)を選ぶということ。
エイヤでやって間違うのか、用心に用心を重ねて被害を最小限に済ませるかだと、後者のほうが良いという理屈は、日本人なら納得していただける方も多いはずです。でも、用心した分だけ神経がすり減ることもあるし、実際、時間やコストもある程度かかる。どちらを選んでも失うものがある可能性が高い。
さて今回、本で出会ったのは以下の文(①)です。
So, a reasonable public health message, if it needs to fit in a headline, may err on the side of recommending more sleep than many people need (eight hours per night).
Hello Sleep (JADE WU, PhD)
ちなみに、この本は主に不眠症患者に向けて書かれた睡眠に関する本であり、上記の文章の前の文章も引用します。(②)
If you dig beneath the headlines, you’ll find that the National Sleep Foundation actually believes that anywhere between five and eleven hours “may be appropriate” for adults.
(中略)
Also I think there is always some tension between public health messaging and individual health advice. There are likely more people who don’t give themselves enough opportunity to sleep(e.g., college students pulling all-nighters, professionals who are married to their email) than people who have chronic insomnia. 文①に続く
Hello Sleep (JADE WU, PhD)
筆者主張1:
ニュースや雑誌の記事を見出し(あるいは冒頭)をさらに掘り下げると、the National Sleep Foundationという睡眠に関する団体(文脈では睡眠の権威的存在)が大人にとって適切な睡眠時間は、5〜11時間の間であると主張していることがわかるなずである。
筆者主張2:
健康に関する大衆向けのメッセージと各個人に向けた健康の助言(例:医師と患者間)の間には、なんらかの対立があるのが常である。
筆者主張3:
徹夜する大学生やメールの処理に追われる専門家といった睡眠不足の人々は、慢性的な不眠症を持つ人よりも多いであろう。
これらが②の筆者の主張です。
5〜11時間が大人にとって適切な睡眠時間であることが研究の結果判明しているが、健康に関する大衆向けのメッセージを流す場合、見出しは、夜な夜なエナドリを飲みながらレポートを仕上げる大学生のように、睡眠を意図的に削りながら体にムチを打つ大衆を想定し、長めの睡眠時間を推奨することになる。
その結果、見出しや記事の先頭にはそんなマジョリティ向けの「大人は8時間以上眠りましょう」というアドバイスが選ばれてしまい、寝たくても眠れないマイノリティの不眠症患者向けの情報は埋もれてしまうということです。
睡眠障害の患者(特に睡眠時間が短くなる高齢者の患者)に、実際は必要な睡眠時間以上の時間を押し付けられても、悪化することはあっても良くなることはないことは容易に想像できますよね。
大衆向けの情報にはバイアスがかかるのが常であり、情報を取捨選択したりある部分に拡大鏡を当てる作業が行われている。その結果、ある部分の人(今回は不眠症患者)たちは不利になる。もっと言えば損をする。
睡眠専門家の立場である筆者の嘆きが今回のerr on the side ofに表れているものと考えます。
証拠として、①の後には、そのような見出しを飾る大衆向けのメッセージで不眠症患者が犠牲になってしまう旨を、But(文①のmayに呼応)から始まる文で筆者は書いています。